メカニカルシャッターの駆動原理
レーザー スキャニング ミラーからマイクロポジショニング スライドまで、電気機械式アクチュエータは光学設計の多くの分野で使用されています。
メカニカルシャッターのアクチュエーター技術は、基本的に筐体に隠れていてユーザーの目に触れる事は少ないですが、シャッターデバイスの「エンジン」としてシャッターの信頼性と性能を決定する最も重要な部品です。
従来のソレノイドは電気機械式リレー等のアプリケーションには適していますが、ストローク全体で均一な力を出力しないため、光学シャッターやレーザーシャッターでの使用には理想的ではありません。
このため、Vincent Associates は、すべてのユニブリッツ シャッター デバイス用に斬新な高性能アクチュエータ設計を開発しました。
1. 定力直線アクチュエータシステム Constant-Force Linear Actuator (CFLA)
定力直線アクチュエータ Constant-Force Linear Actuator (CLFA)ではグラフのように直線的な出力が可能になりました。
まず動き出しの出力が早くなる事でシャッターブレードの開閉の動き出しも早くなる事はシャッターとっては非常に重要です。
また、閉じきるタイミングで出力が上がる事でシャッターが過分に加速され、閉じた瞬間に羽が損傷することを防ぐことが出来ます。
このモデルのシャッターではアクチュエータコイルに電圧を加えると、可動部であるアーマチュアがアクチュエータコイルに向かって引っ張られる事でシャッターが開閉するようになっています。
また、シャッターに電圧を加えるのをやめるとバネによってシャッターが閉じる事になります。
このCLFAはシングル、デュアル、マルチブレードのロータリードライブリング型シャッターに使用されています。
2. 非接触アクティベーションシステム Non-Contact Activation System (N-CAS)
近年の光学業界では、長いシャッター寿命、省スペース化された形状、安定した動作が強く要求されています。
Vincent Associates社は、CFLAの性能と信頼性をベースに非接触アクティベーションシステム”Non-Contact Activation System” (N-CAS) というより効率的でシンプルなシャッターとアクチュエータの動作メカニズムを構築しました。
N-CASを導入したシャッターは、可動部品がほとんどないシンプルな構造であるため、
摩耗が少ないだけでなく、よりシンプルな電気回路でシャッターを制御可能となりました。
N-CASを利用したシャッターは、CFLAや従来のソレノイド駆動では実現が難しかったBi-Stable 双安定機能を実現しました。
Bi-stableモデルのシャッターではシャッターを開閉させるタイミングでのみコイルを通電させる仕様となっています。
このためシャッターを開放状態で維持するために通電し続ける必要がないため、アクチュエータコイルで発生する熱を除去することが出来ます。
これはシャッターを長時間開放したままにするアプリケーションにとって最適な特徴です。
2つのアクチュエータコイル (図のコイルAとB) は並べて配置されており、共有の磁気コアで接続して 2 つの磁極面を作成します。
そして永久磁石がシャッタブレードに取り付けられており、一方の磁極面から他方の磁極面に移動するように設計されています。
電圧がかかり、2つのアクチュエータコイル(AとB)が磁場を形成すると、エンドストップにぶつかるそれぞれの位置まで永久磁石 (シャッターブレード)が移動します。
この時、両方のコイルにそれぞれが反対の磁場を生成しているので、コイルAが永久磁石を反発し、コイルBが永久磁石を引き付けることで、永久磁石がコイルBまで移動しシャッターが作動します。
磁石がコイルBまで移動すると磁石の動きが停止し、シャッターブレードが開位置でロックされます。
そしてコイルに逆方向の電流が印加されるまで、シャッター ブレードは開いたままになります。
CFLA 設計では、アクチュエータが機械的に作動していましたが、この設計ではアクチュエータは磁気的に作動するため、アクチュエータ自体の摩耗を抑えることが可能です。
3. デザインスケーラブルシャッター Design-Scalable Shutter (DSS)
さまざまな進歩により、イメージング業界ではスリムでコンパクトな設計のシャッターが求められています。
NS シリーズシャッターなどの非接触アクティベーションシステム(N-CAS)を利用したシャッターの薄型設計を元に開発されたデザインスケーラブルシャッター(DSS)シリーズはコイルを内部に統合した最新の設計を実現しました。
DSSシリーズでは、シャッターの部品が全てハウジングに収まった、完全に平らな側面を取り付けに利用可能な優れたデザインをとっています。
この結果として信頼性が高く、DSSシャッターは数千万回のサイクルまで利用できるようになりました。
DSSでは磁気コアは 2 つの磁極面を生成します。
永久磁石はシャッタ ブレードに取り付けられており、一方の磁極面から他方の磁極面に移動するように設計されています。
コイルが作動すると、磁石に最も近い磁極面が反発力になり、反対側の磁極面が永久磁石を引き付けます。
永久磁石は一方のコア位置から他方のコア位置に押し出され、それによってシャッターが作動します。
磁石が吸引しているコアの位置まで移動すると、磁石の動きが停止して停止し、シャッターブレードが開位置でロックされます。
そしてコイルに逆方向の電流が印加されるまで、シャッター ブレードは開いたままになります。
DSS アクチュエータの基本理論は N-CAS 設計と非常に似ていますが、DSS アクチュエータではコアと可動磁石が同じ平面に配置されているため、よりコンパクトで効率的な動作が可能になります。
まとめ
ここまで説明したようにシャッターの動作原理は以下の2つに分かれています。
1. 定力直線アクチュエータシステム Constant-Force Linear Actuator (CFLA)
2. 非接触アクティベーションシステム Non-Contact Activation System (N-CAS)
3. デザインスケーラブルシャッター Design-Scalable Shutter (DSS)
このようにアクチュエータ技術は何年にもわたって進化してきましたが、光学シャッターやレーザーシャッターに関するアクチュエータの基本的な機能は変わっていません。特定の露光時間と動作周波数に応じて、シャッターを繰り返し開閉するという機能のままです。
N-CASおよびDSSを使用したシャッターは開いたままあるいは閉じたままにするために電力を必要としないBi-Stableタイプで、CFLAを使用したシャッターは電圧をかけていないと閉じたまま(あるいは開いたまま)になるUni-Stableです。ユーザーはアプリケーションに合わせてシステムに最適なアクチュエータを搭載したシャッターを選択できます。
これらのシャッターには動作速度や動作安定性などの様々な長所に加えて、非常に高速で寿命が長いという長所があります。
シャッターの選定に迷った際には弊社までお問い合わせ下さい。